2020.11.09

株式会社吉村

想いを包み、未来を創造するパートナーを目指します。

MAIN INTERVIEW
株式会社吉村

代表取締役社長

橋本久美子hashimoto kumiko

KOKOROZASHI

想いを包み、未来を創造するパートナーを目指します

今回の取材について

日本茶業界を盛り立てる、その先陣を進む企業が株式会社吉村です。1932年創業のお茶に特化した包装資材メーカーである同社。デザインから印刷・加工・出荷までの一貫生産を強みとして、高品質な小ロット多品種生産を実現し、全国約8,000軒のお茶屋さんに3,000種類以上のパッケージを提供しています。

吉村の社長橋本久美子さんは、主婦から三代目社長に就任した異色の経営者。ある危機感をきっかけに消費者を巻き込んだ座談会を開催し、得た声をもとに、時代の先をゆく提案を社内外に行ってきたことから「明日の飯担当」として会社の未来を託されました。その先見性で現在では、日本茶業界のビジネスパートナーとして「需要創造商品」の開発に注力しています。

また同社は「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の中小企業基盤整備機構理事長賞を受賞するなど、人材育成にも定評のある企業です。社員の自発的な発言や行動を推奨し、「5分会議」、「壁新聞」、「植田方程式」、「ノーベル起案」、「目標会議」、「イチオシ投票」、「レジェンドリスト」など、独特な取り組みも多数あり、その独自性が業種を問わず注目されています。

事業推進の原動力となる志や大切にされる価値観

日本茶業界を盛り上げようと奮闘される橋本さんの、想いのきっかけとなる出来事を教えてください。

想い返してみると私がまだ専業主婦だった頃に始めた主婦同士のお茶会にあります。当時は普通の30代の主婦で、主婦たちが出してくる飲み物は決まってコーヒーか紅茶で、日本茶は全く出ませんでした。その様子を見て、老舗の包装資材メーカーの娘(※橋本社長のお父様が先代社長)として「ペットボトルは残るかもしれないけれど、茶袋は要らなくなるかもしれない」と危機感を感じました。

父に「こんなに子育て世代が日本茶を飲んでいなければ、きっと子供たちは飲まなくなる」と進言したものの聞いてもらえず、「お父さんが考えているのはお茶屋さんのニーズで、消費者ニーズではない座談会を開いて消費者の率直な考えを知る必要がある」と言い切り「消費者実態調査」をスタートしました。

そして座談会では、「コーヒーメーカーならすぐに間違いなくできる」「日本茶は淹れ方の正解が分からなくて難しい」と率直な声を聞きました。拾った意見は吉村のお客様であるお茶屋さんに届けたく、吉村が配布している茶事記という小冊子を通じて全国のお茶屋さんに発信をしたのです。座談会は1995年から25年継続し、今年は新型コロナ問題からZoomで開催しました。

今思うとよくあれ程に情熱を燃やせたと思いますが、当時はまだお茶の袋が順調に売れており、吉村の社員はみんな不思議に感じていたと思います。

小さな気づき、消費者座談会を開催、消費者の声を聞くことで何か変化はありましたか。

消費者の話を聞いていく中で、未来予知ではないですが、先々に起こることを少しずつ予感できるようになりました。例えば、お中元やお歳暮の売上が落ちて、茶業界が「もう駄目かもしれない」と言い始めた頃に、「儀礼的なものは団塊世代までで、その世代が引退したら大きく凹みます」「次はカジュアルギフトにお茶もシフトしていく必要があります」と、今となっては当たり前のことを茶業界に先駆けて発信していました。むしろ先駆け過ぎて社内では理解してもらえませんでした。

またお茶のパッケージ自体も当時のお茶屋さんは「新茶のパッケージはめでたい赤が当たり前。白は絶対に売れない」という固定観念がありました。ところが座談会をもとに、白地のパッケージを採用したところ予想以上に売れました。お茶屋さんも目を丸くしてびっくりされていました。もちろん、初めは社内・お茶屋さん共に大反対です。そういった経験を踏まえると消費者の声を聞くのが一番と改めて思います。

そのような活動を続けていたからでしょうか、先代から「お前は明日の飯担当」と会社の未来を託されました。売上50億円規模の当社が直近10年間で8億円の減収となり、世の中の変化を誰しもが感じるようになった頃です。消費者座談会を続ける中で「急須はもうなくなります」「ティーバッグもギフトとして売ることが大切です」と、おこがましいですが先を見据えて提案し続けたことに、先代も何かを感じて私に期待したのではないでしょうか。

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世の中の変化を先取りしている橋本さんに、お父さんも茶業界の命運を託したのかもしれませんね。

社長になってから、たくさんの激動がありました。嵐の渦中に放り込まれたようなものです。例えば私が社長になった頃、同業のライバル企業さんが大きく舵を切りました。一部上場企業とMAを行い、お茶特化のパッケージだけでなく、汎用性の高いものを扱うようになり、値下げによる価格競争に陥りました。

その会社の代表と会合でお会いした時に、冗談交じりで「御社のカタログをうちの営業が持って回ったらもっと売れますよ」と話したところ「うちは通販がメイン。それでは戦略と異なるから面倒だよ」とおっしゃいました。その時に方向性が全く違うことを理解し、自分たちは自分たちの戦い方をする必要性を感じました。そして、敢えて想いをそのままに申しますと、この人が捨てたお茶業界を、私が「茶業界のビジネスパートナーとして何とかする」と強く思いました。

それから茶業界を強く意識するようになり、目に入るものも変わりました。例えば当時の当社の看板には「総合パッケージメーカー」と書いてありました。封筒にも名刺にも同様です。しかし、本当の意味での「総合パッケージメーカー」は大日本印刷さんや凸版印刷さんです。事業戦略の観点からも一番になれないものを看板に掲げていても仕方ないと一新しました。

世の中の変化、ライバルの変化、その中で「茶業界のビジネスパートナー」になる想いが芽生えたのですね。

お恥ずかしいですが、最初から志があったわけではなく、座談会で消費者の考えを知り、それを届けようと社内やお茶屋さんに動いても相手にされない悔しさを知り。それでも時代が変わる中で、日本茶にはたくさんの魅力があるのに、業界側がきちんとプロデュースできていないことに悔しい思いがありました。そしてライバルの一件から、お茶業界のパートナーとして、愛おしい日本茶の魅力をきちんと届けようと思ったのです。

日本茶を「美味しくない」という人と会ったことがありません。むしろ「ホッとする」「味わいがある」といった言葉をもらうことが多いのですが、実態として総務省統計資料からもコーヒーが国民飲料と言えると思います。人気はあるはずなのに、なぜか手に取ってもらえない背景にはミスマッチがあります。例えば「急須で最後の一滴をこう入れなさい」といった、今の人に馴染まない慣習が大きな壁になっているように思えます。古き良きものは大切にしながらも時代に合わせなければ結局廃れます。日本茶に罪はなく、提供する私たちが日本茶の魅力をユーザーに伝わるように伝えなければなりません。

現代では日本茶の緑を着色料と思う人もいます。びっくりするような現実があるのです。今は業界の皆さんもこのままでは日本茶がますます売れなくなると自覚しています。何とかしなければなりません。とはいえ、私たちが「パートナーですよ」と勝手に言っても、相手は見向きもしてくれません。これまでに培ったお茶屋さんとの信頼関係を大切にし、お茶屋さんの事業の貢献に努めていく必要があります。お茶業界を盛り上げる一員として、私たちが支えとならなければなりません。

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商品・サービスに込められた想い

橋本さんにとっての日本茶の魅力を教えてください。

私は日本茶を、一区切りをつけるシーンでよく飲みます。その日本茶を淹れる時間、それまでの過程がとても愛おしいです。今でも思い出すのが、父が日本茶を淹れてくれる時間です。お湯一つ沸かせないのに、ご飯を食べ終わると「はいお茶ですよ」と、お茶葉をたっぷり入れた日本茶を淹れてくれるのです。味や香りを楽しみながら、ほっと一息つく、とてもいい時間を過ごしていました。

また、いつも同じ味ではなく、うまくいったり、ちょっと失敗したり、それが愛おしいのです。旅もちょっとした寄り道でふとした楽しみが生まれますが、それと同じような感覚です。日本茶の淹れ方にこだわるよりも、そういったプロセスにこそ喜びや楽しみがあるのではと思います。

そのような日本茶の魅力を伝えるパッケージをつくる貴社。その強みを教えてください。

消費者の意識動向をよみ、お客様のニーズにあった商品をご提案する「需要創造商品」の開発。柔軟にお客様のニーズ・商品の成長に合わせたロット提案ができる「自社一貫生産」。デジタル印刷の世界コンテスト「ディースクープ」で、過去に4度受賞をした「デジタル印刷」。大切なお客様の商品開発のパートナーとしての品質をお約束するとともに、環境に配慮した企業活動を推進する「品質環境マネジメントシステム」。そしてそれらを実現する社員一人一人、組織としての成果に結ぶ「結束力」です。詳しくはぜひ当社HP(https://www.yoshimura-pack.co.jp/corporate/strength/)も見てください。

それらの中で、デジタル印刷技術をご紹介します。今までの印刷技術では、多様化する消費者のニーズや視覚的な興味訴求の観点で多様性や高品質性を実現したい一方で、品質は低く、小ロット対応化により採算が合わなくなるため、お茶業界のニーズを十分に満たすことができませんでした。

※同社のデジタル印刷「エスプリ」を支えるヒューレット・パッカードの印刷機

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ですが、2008年に、ヒューレット・パッカード社がフィルム印刷の新製品を開発。世界初の初号機を思い切って取り入れました。当時はまだ先代の父が存命で、「初号機を買うようなリスクを負うな。買うと言うなら俺の屍を超えてゆけ」と言っていた父を説得して、採用を決定しました。それが今の「エスプリ」に繋がっています。

軌道に乗せるまでに3年程かかりましたが、その反響はすごいものでした。今までは他社との差別化にも苦労し価格競争に陥っていましたが、状況は一変しました。当時、デザイナーを採用し、独自性を持って提案できるようになったことも大きかったです。高品質であることはもちろんこと、カスタマイズ性が高く小ロット印刷でイニシャルコストを抑えることでお客様も十分に採算を確保できます。お茶屋さんが店頭の中で、バラエティセットやシリーズものを売れるようになり、お茶屋さんの売上向上に大きく寄与することができました。

時代に合わせて新しい技術を積極的に採用。そんな同社が新たに革新的な挑戦を始めたと伺いました。

創業87年の歴史の中で、日本茶自体には触れないようにしてきました。やはり8,000件のお茶屋さんや専門店・農家・JAなどの関係者がいらっしゃる中で、当社が特定の日本茶を扱うと贔屓に見え、お気持ちを悪くしてしまう方も生まれます。ですがこの新型コロナ問題で苦しむお茶屋さんを見て、そうは言っていられない状況になりました。

今までは消費者のニーズを聞いて、お茶屋さんに提案をする裏方役でしたが、消費者のニーズを満たすための未開拓市場のラストワンマイルを私たちがこじ開けることにしたのです。私たちが開拓し、生まれた市場にお茶屋さんに参入してもらうことが、業界にとって今必要なことであると考えています。

そのラストワンマイルとして何とかしたいものが、コーヒーに独占されている飲用シーンです。仕事中オフィスでほっと一息をつく、散歩する時にテイクアウト、イベントや見学会でもらうノベルティ、それらのシーンにあるのは、コーヒーです。そこに日本茶があることを当たり前にします。今までお茶屋さんが対応できず、窮地に立たされている日本茶業界を私たちが牽引するために、パッケージ会社から脱皮して直接日本茶を扱い、この市場を拓いていくのです。

業界を盛り上げるために、生まれた新商品。「リーフティーカップ」について詳しく教えてください。

※同社の新製品「リーフティーカップ」

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写真のように、紙コップの底面部に茶葉を充填し、三角ティーバッグで使われているメッシュ素材を使った透明なフィルターで覆うことで、お湯を注げば淹れたてのお茶が飲めるツールです。フィルターは、糊や接着剤を一切使わない熱圧着でセットし、安全性が高く風味を損なわない工夫をしています。リーフティーカップとお湯があればワンアクションで、温かくおいしい日本茶を飲むことができます。

また109日、株式会社ビジネスガイド社主催の「第28回グルメ&ダイニングスタイルショー秋2020」のコンテスト・アワードのビバレッジ部門で準大賞を受賞しました。

お茶を気軽に飲むなら、ペットボトル飲料という選択肢もありますが、茶葉にお湯を注ぐ淹れ立ての日本茶だからこその香りや味わいを感じることはできません。ぜひリーフティーカップで日本茶本来の魅力に触れてください。

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(執筆メンバーで味わって、、、)これは驚きですね!驚きです(思わず復唱)。お茶業界からの反応はどうでしたか。

迷いや不安感もある中で行った商品説明会では、大御所の問屋さんの会長から「頑張ったね」と言葉をいただけ、「今までのお茶屋の感覚では踏み出せない挑戦だよ」「一歩離れて日本茶を見ているからこそ生まれるものだね」と好意的な言葉をいただき、安心しました。

簡便化の流れから急須がティーバッグとなり、さらにリーフティーカップでお茶を淹れて飲むハードルを下げ、コーヒーが主役の飲用シーンに日本茶の新市場を拓きます。市場ができたら他のお茶屋さんにどんどん参入してもらいたいです。

茶業界を盛り上げるため、自ら先陣を行く。他にも会社見学会といった面白い取り組みをしていますよね。

月に一度のペースで、当社の考え方や取り組みを知ってもらう機会として会社見学会を開催しています。目的は、業種を問わず、想いを共有し一緒に何かしようと試みる企業様と新たな価値を生み出すことです。

最近も会社見学会を通じて、とても面白いお話しがありました。非常食を取り扱う企業から、備蓄に茶袋を生かせるのではと興味を持っていただいたのです。日本茶は少しでも光が入ると劣化するため、品質保持の観点で茶袋には様々なノウハウがあります。私たちは非常食の発想は全くありませんでしたが、だからこそ全く別分野の方との出会いをつくっていきたいのです。ぜひこの記事を読んだ方は、会社見学会へのご参加お待ちしております。
https://www.yoshimura-pack.co.jp/corporate/seminar/

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人財活性や組織づくりへの取り組み

業界に先駆け市場を開拓する、伝統と挑戦を合わせ持つ同社。その経営理念について教えてください。

当社の経営理念は「想いを包み、未来を創造するパートナーを目指します。」で、理念ができたのは2014年と最近です。お話してきましたように私の想いとして、「茶業界のビジネスパートナー」になることを胸に温めて取り組み、業界を盛り上げようという気持ちには変わりありませんが、会社の理念として掲げてはいません。

少し遡りますが起点となったのは2011年です。デジタル印刷が軌道に乗り始め、設備面のロス率改善のため、18億の投資をして工場を建てたまでは良かったものの、2011年の東日本大震災に、追随してセシウム問題が発生したことで、売上がピタリと止まりました。投資をしてお金はない、売上もない、まさに窮地です。

それでも逆境の中、健康博覧会でサプリメント用の袋が大反響となり「健康食品事業部をつくっても良いのでは」「できる営業マンは全て健康食品関係に対応させよう」と社内で声が上がりました。また、日本茶の需要減少に伴い、夜間操業を止めていた工場では「ポテトチップスや飴のパッケージもつくれるのに、日本茶にこだわるからこんなことになる」と言われました。その時、ただ「すいません」としか言えなかったことを今でも覚えています。

「茶業界のビジネスパートナーになる」という想いがある一方で、健康食品事業でも良いのではと思い始め、お茶のパッケージにこだわることが難しい中で、売上のメドが立たなくなった瞬間に茶袋でなくても、売上に繋がれば良いと思っていることにハッと気づいたのです。ブレることのないように、一体何のために自分は経営をしているのか、あるべき姿を明確にするために経営理念をつくりました。

※同社の経営理念・経営方針
※詳しくはこちらから(https://www.yoshimura-pack.co.jp/corporate/philosophy/)

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自分自身を迷わせないようにすることがきっかけとなり、経営理念をつくったのですね。

経営理念をつくってからとても仕事がしやすくなりました。例えば、粋町ショコラというかわいいパッケージに、割れチョコを入れた商品をつくり、2015年のインターナショナル・ギフト・ショーで、グルメ&ダイニング賞の食品部門でフード大賞を獲得する反響を得た頃、大手量販店からチョコの取り扱いを打診された時のことです。とても嬉しいお話しでしたが、チョコを売ることが目的ではなく、お茶を売るためのお菓子でしたので、ご辞退しました。

ですが先方はなかなか納得してくださいませんでした。そこで、当社の経営理念を見せ、「どんなに高い契約でも、理念を無視してしまったら、社員は理念を建前と思います」「それを私が体現してしまうのであれば、社長を辞めなければなりません」とお話ししました。すると向こうも理解してくださり、「チョコに負けないくらいの、御社の理念に合った商品を開発してくださいね」とおっしゃっていただきました。

その時、理念が自分を助けることを実感しました。相手に納得してもらうだけでなく、経営者として会社のあるべき姿を軸とした判断をするために、助けてくれるのです。今まではリーダーとしての判断に迫られた際に、毎回ゼロベースで答えに苦しむことがありましたが理念が私自身を照らす鑑になるのです。理念に照らすことで社員とも一緒に考える拠り所にもなります。その存在の価値を確信できたので、今は社員にもっと深く理解してもらいたいと浸透に力を入れています。

組織づくりではどのようなことを意識されていますか。

トップダウンではなく、社員の意見を生かす組織にすることを心掛けています。どうしても立場が上の人の意見に配慮してしまうので、良い意見が埋もれてしまいがちになることがあります。そこで、「ノーベル起案」という仕組みをつくり、新しい製品の提案から雇用環境の改善案まで社員の提案を幅広く募っています。

少しずつですが社員から沢山の面白い動きが生まれるようになりました。「ノーベル起案」では1年で130案が寄せられ、65案が採用された年もあります。他にも最近では「ジャパネットあかね」が社内を賑わせています。これは入社2年目の下の名前があかねという社員が、新型コロナ問題で残っている商品を、社内販売する販促活動です。以前は「社販祭り」と題して、社内の食堂で販売していたのですが、それもできない状況。「こんな味もありますよ」とジャパネットのような形で販促活動をしています。私が全然知らないところで自然発生し、自分たちで創意工夫して動いているのです。

社員の自主性を生み出すことは多くの企業の課題です。その実現に大切なことは何でしょうか。

伝わるように伝えることが大切です。最近では「ニーズと解決策」という言葉が社内で流行っています。“なぜやりたいのか”がニーズで、“そのためにこれをやる!”が解決策とも言えます。例えば新型コロナ問題を受けて、47日から本社は全て在宅勤務としましたが単に私から発言するのではトップダウンです。そこで「ニーズは、経済を止めず倒産しないようにすること、命を守るために感染を広げないようにすること」「相反しているこの2つをできる限り実現するために、解決策として本社は在宅勤務とします」「正解は誰にも分からないから、ブラッシュアップも異論も全然OKです」と話しました。

単に「在宅勤務をしなさい」と言えば、指示を守るか守らないかの視点です。ですが、ニーズを満たすための解決策として考えてもらうと、思いもよらないアイディアが出てきます。私たち経営側が見えない、現場の事情もたくさんあります。実際、社員から様々な意見が出て、現場の事情を加味した改善策が生まれます。

もちろん言葉だけでなく、考えてみる、やってみることも大切です。例えば「挨拶広げる委員会」というものをつくり、敢えて挨拶をしないメンバーを集めて、社内の挨拶浸透に協力してもらいました。すると自分なりに挨拶の必要性を考えるようになり、普段挨拶しない自分たちでも行いたくなるにはどうすれば良いか考えてもらい、自然とその大切さを理解し、挨拶をするようになりました。

現代では様々な組織運営ノウハウが溢れていますが、貴社も何か参考にしたのですか。

特別何かということはなく、コンサルタントを入れたこともありません。自分たちで考えて、やってみて、改善するPDCAサイクルです。例えば、ここ数年で会議術の見直しを行い、ストップウォッチを社員皆が持参して時間管理をしています。他には、「マル秘ノート経営計画書」という、社の方針から社員一人ひとりの個人目標まで細かく記載した冊子があり、毎年更新し進化させています。

意見を出し自己改善する組織。何よりの凄さは、決めたことをきちんと行い、振り返り投資に結ぶ。その実行力なのでは。

言われるとそのようにも感じますし、自分がつくったルール、他人がつくったルール問わず、振返り改善することを私は大切にしています。社員もそれを実行します。私の父は「みんな意見を言っていいよ」と言いながら、最後に鶴の一声でひっくり返し、「今までのは、いったい何だったのか」と思ったことがあります。反面教師ですが、全員で出した結論は尊重することを肝に銘じています。

例えば、私が「こんな会議いるんじゃないの」と、良かれと会議体をたくさんつくってきました。ですが、ノーベル起案で「やめることを決める会議が欲しい」という意見を社員からもらったのです。会議が乱立してしまっていた事実を知り、もちろんその提案を採用しました。

このエピソードには、ただやるのではなく意味を自問自答し改善しようとする姿勢が詰まっています。これからも経営理念である「想いを包み、未来を創造するパートナーを目指します。」の実現のために、社員と共に成長していきます。

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COMPANY PROFILE

理念・ミッション

〇経営理念
想いを包み、未来を創造するパートナーを目指します。

社名

株式会社吉村

代表

代表取締役社長 橋本久美子

事業内容

・食品包装資材の企画、製造、販売
(グラビア印刷・軟包装デジタル印刷・ラミネート加工・スリット加工・製袋加工・刷込後加工)

設立年

1954年(昭和29年)1011日 ※1932年創業

社員数

230名(20199月現在)

売上

51億6,000万円(20199月期)

所在地

142-0041
東京都品川区戸越4-7-15

受賞・表彰歴

  • 「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選出
  • 「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選出
  • 第8回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞中小企業基盤整備機構理事会賞受賞
  • 「地域未来牽引企業」に選定

その他トピック

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