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調達・購買改革コラム
2019.11.06

調達・購買コンサルタントレポート inオーストラリア(後編)

調達・購買コンサルタントレポート inオーストラリア(後編)

今回のコラムは前回に続き、オーストラリアの調達購買ソリューションイベントへの参加レポートです。前回は、海外での調達イベントの盛況ぶりについて触れましたが、今回はその中身としてSAP AribaCoupaそれぞれのベンダーの製品のアップデートのポイントをお伝えできればと考えます。

 

SAP Ariba|製品群の統合とユーザーエクスペリエンスの可視化

今回のSAP Aribaの機能面のアップデートとしては、イベントの性質的なものもあるかもしれませんが、例えば分析ダッシュボード機能の強化や契約管理AIの強化など、マイナーアップデートのリリースの位置づけだったかと見立てられます。

一方、コンセプト面では、“One Platform”、“Intelligent Spend Management”、そして“Experience”という3つのキーワードが繰り返しイベントの中で述べられ、これらのコンセプトを軸とした調達購買ソリューションの発展の大きな方向性が強調されていました。その内容についてご紹介させていただきます。

1.“One Platform”と“Intelligent Spend Management”

メインのプレゼンテーションの中で、支出管理やカテゴリーマネジメントをより包括的に行うために、別個のパッケージとして提供されているSAP AribaとSAP FieldglassとSAP Concur、3つのSaaSサービスの連携強化を進めるという方針が“One Platform”というキーワードのもとに紹介されていました。これにより、Aribaは間接材、外部人材、旅費・経費という、ほぼすべての企業の支出カテゴリを全方位的にカバーできることになります。

“Intelligent Spend Management”は、この様にすべての支出データや業務プロセスをAribaを経由させることでシームレスに繋げ、調達業務を中心としたビジネス活動においてより高度かつ迅速に意思決定やその実行を行うことで、高い成果を上げられるということが訴求ポイントになります。

今回の発表されたニュースとしては、目先では標準的に3つのパッケージのデータや機能の連携が可能になることに留まる様ですが、将来的には重複機能の排除を進め、1つのプラットフォーム製品として提供できるように計画しているということ、また近い将来その情報がリリースされるであろうことが語られました。

2.“Experience“

もう一つの方向性である“Experience“は、SAP本体が新たに打ち出している基本戦略でもあります。生産や調達や販売など各業務で扱うデータ(operationのOデータ)と、そこに伴う体験・感情をデータ化したもの(experienceのXデータ)とを組み合わせることで、従来は認識できなかった課題を解決する、というものです。

この戦略のベースを作っているのが、SAPが2019年1月に買収したQualtricsという企業・製品です。簡単に言うと、顧客や従業員に向けたWebアンケート/調査を設計し、それを配信回収、そして回答結果を分析するクラウド製品で、例えば商品の顧客満足度調査や、所属組織に対する従業員サーベイといったシーンで用いられます。

この仕組みをSAP Aribaと組み合わせて使うことで、これまで認識出来なかったようなバイヤやサプライヤなどユーザーの、業務やシステムに対する満足・不満足といった感情を吸い上げ、その分析と対策を行うことでより踏み込んだ業務の改善に繋げることを可能にする、というものです。

当面はAriba-Fieldglass-Concur統合計画の進捗がどうなるか、そしてその先、カスタマーエクスペリエンスの定量化を通じ、どの様にロードマップをアップデートしていくか、業界リーダー製品の一つとして引き続き注目したいと思います。

 

Coupa|コンプライアンスと電子決済機能を強化

Coupaは、“BSM” (Business Spend Management|企業支出の統合的管理)という概念を、“CRM”(Customer Relationship Management|顧客関係管理) や“ERP”(Enterprise Resources Planning|企業資源計画)と同列のレベルに位置づけられるものとして提唱し、自社の製品・サービスをBSMのための統合製品群としてブランディングしています。

そんなCoupaのアップデートとして、2つの側面に着目しご紹介させて頂きます。

1.コンプライアンス強化

Coupaは以前から、取引先財務リスク管理や、それをベースにしたサプライヤーレーティングのようにコンプライアンス面の機能を訴求していましたが、今回のアップデートでは、コンプライアンスリスクの観点を更に広げ、不正リスクのある取引や支出について、その振る舞いをパターン化し、検知した不正へのアラートや、トランザクションの停止など、リアルタイム性の高いリスク検知・管理の機能がリリースされました。

支出に対するコンプライアンスは、成長企業にとって欠かすことの出来ない「守り」の視点ですが、ユーザー企業側には、投資対効果の見えづらさ故にピンポイントには積極的な投資を行えないという課題があるため、こうしたコンポーネントが充実していくことはよりニーズにマッチしていくのではないかと考えます。

2.B2B電子決済サービス(Coupa Payの発展強化)

Coupa Payは、既に開発済みの機能で、実現機能としては、バイヤ企業からの支払い時、支払期限に対する早さに応じ決済金額を割引する機能や、バーチャル・ワンタイムの法人クレジットカードの発行、それを用いた支払い処理機能があります。これにより、購買調達業務の最終プロセスである支払の可視化を実現すると同時に、キャッシュフロー改善、口座開設・管理工数の削減や、従業員による立替え払いなどを防ぐことができます。このCoupa Payにおける新機能としてはノンPO取引(請求書払い)への対応機能を実装していくとのことです。

この様な支払/決済周辺の機能は他の購買ソリューションやサービスにも備わっていることもありますが、買掛処理の自動化モジュールなど、Coupaの既存コンポーネントとしてアドバンテージのある領域であること、また機能以外にもPaypalやCitiBankなどの金融業、Eコマース企業とのパートナーシップを推し進めているということがアナウンスされている点から、他社に対する先行あるいは差別化が出来るような取り組みを見せてくれるのではないかと注目です。

 

今回のアップデートのまとめ

総括すると、SAP Aribaは現時点では新たな開発で風呂敷を広げるというよりも既存のモジュールを結合させることに注力していることが伺えます。また新たな方向性として、ユーザーエクスペリエンスを吸い上げる仕組みを設けることで、製品やサービスの改善に繋げることをコンセプトとして描いています。

また、Coupaは、BSMのコンセプトの実現に向け、S2C領域だけでなく、コンプライアンスや決済機能の領域でも、ユーザーの細かなニーズに対する機能の強化・拡張を地道に積み重ねている状況です。そして外部企業とのパートナーリングを起点としたエコシステム形成により、今後さらなる動きがあると期待されます。

以上、イベントレポートとしては各ベンダーが発信したアップデートの内容を中心にお伝えさせて頂きましたが、いずれの製品も欧米を前提としたソリューションであることから、引き続きローカライズ踏まえた日本国内での情報発信を注視する必要があることにご留意ください。

今回、現地で見聞きした内容からそれぞれのベンダーの戦略を仮説的に考えると、支出カバレッジの拡大と、コンプライアンスの強化、そして電子決済サービスのコンビネーションからなる購買調達ソリューションの一つの進化の方向性が見えてきます。改めてこのあたりの考察についてお伝えできればと思います。

それではまたお会いしましょう。

 

Coupaのイベントの様子
幹部まで含めた社員制作のオリジナルダンスムービーが上映されるなど終始フレンドリーな雰囲気

 

記載されているSAP Ariba並びにCOUPA等の固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

 




監修企業

 アンカービジネスコンサルティング株式会社

 

記事監修者

アンカービジネスコンサルティング株式会社

調達・購買コンサルティングチーム
マネージングディレクター 藤瀬 智央


 

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