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調達・購買改革コラム
2019.07.05

調達・購買部門出身の企業リーダーが示すリーダーシップ(1/2)

調達・購買部門出身の企業リーダーが示すリーダーシップ(1/2)

かつて筆者は、調達の現場でバイヤー業務に従事していました。その頃の諸先輩方に言わせると、その昔、調達部門のポジションは決して高いとは言えなかった時代があり、その体験があるからこそ、昨今の調達部門はプレッシャーと表裏一体でありつつも、過去とは比べ物にならないほどに周囲から寄せられる期待が高まっていることを実感するそうです。

グローバルに目を向けると、Apple社のCEO/Tim Cook氏 、マクドナルド社のEVP(上級副社長)/Francesca DeBiase氏、他にもGM社のCEO/Mary Teresa Barra氏など、調達部門出身者がトップ企業のリーダーとして活躍する姿がありますが、まさに今の時代を反映しているのかもしれません。

 

今回は、こうした調達部門出身のリーダーたちが、今日の激変する環境下で事業そのものをリードする立場となった時に、調達のプロフェッショナルとしての経験をどのように活かしているかを探り、そこからの弊社調達・購買チームの考えをお伝えできればと思います。

前述したAppleの現CEOTim Cook氏は、Appleに入社後、調達・SCMの領域で社内外での改革を進め、サプライヤーの集約によるコスト競争力の獲得や、驚異的なCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の達成などを実現しています。

 

Tim Cookの経歴や、Appleの調達・SCMの改革を始めとした活動については、ネット検索等で多くの解説を得ることができるので、今回はその詳細を割愛しますが、弊社の調達購買チームが着目するのは、Tim Cookが作ったAppleCSRの枠組みです。

実は、創業者である故Steve JobsCSRには全く関心がなく、CSRの取り組みをAppleで立ち上げたのはTim Cookだったのですが、現在AppleはそのCSR活動として、サプライヤー責任報告書と環境報告書の2つを毎年提出しています。

機会があれば是非試して頂きたいのですが、インターネットで「Apple CSR」と検索すると、真っ先に検索結果に上がって来るのが、「サプライヤー責任(Supplier Responsibility)」というタイトルのページです。(20197月現在)

これが特別だということは、例えばトヨタや、SONYで同様に検索してみるとお分かり頂けると思いますが、多くの企業において、調達やサプライチェーンの領域は、あくまで数あるCSRの構成要素の一つという位置付けをされています。そのCSR方針や詳しい内容については、是非別の機会にコラムのテーマとさせて頂きたいところなのですが、ここではApple2019年度のサプライヤー責任報告書のトップメッセージを引用させてください。(*1)

 

 私たちは、Apple製品を作る人たちと、私たちみんなが共有する地球のことを深く考えています。だから、すべての従業員が確実に尊厳と敬意を持って扱われるように、
自社とサプライヤーを最高水準に保っています。さらに私たちは自分たちの取り組みを公表しています。
それにより、他社が私たちのあとに続くことができるからです。

 

特に最後の一文からは、自社やそのサプライチェーンのみならず、巨大なApple経済圏を構築する責任の先に、産業全体の発展やサステナブルな社会・地球環境といった大きなスケールの志があることが読み取れます。

Tim Cookは単に自らの得意な調達でのキャリア・経験をもとにして、CSRの主軸をサプライヤー責任に据えているわけではなく、その経験を活かし、更に経営者として社会に対する規範を示すことにまで昇華させ、Appleの唯一無二のビジネスモデルとブランドの確立に貢献したと言えます。

 

今回、弊社調達・購買チームとしてお伝えしたかったことは、調達部門の出身者が社長になるべきだ、とか、調達部門出身者がこれから重用される時代になる・ならない、といったキャリアパス論ではありません。

これからの調達・購買の仕事は、調達部門出身のリーダー達がその活躍で示しているように、単純な買い物や、内と外の窓口役で終わらず、経営や社会へ与える新たな価値を作ることができるということであり、調達機能の高度化を語る際に認識すべき重要な点であると弊チームは考えます。

次回も、活躍する調達部門出身リーダーの姿を追っていきたいと思います。

またお会いしましょう。

 *1: https://www.apple.com/jp/supplier-responsibility/|Appleサプライヤー責任報告書

 

 




監修企業

 アンカービジネスコンサルティング株式会社
 

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