HRテック レポート【前編】 HR Technology Conference & Expo 2019 ラスベガス
HRテック レポート【前編】 HR Technology Conference & Expo 2019 ラスベガス
今回は、10月にラスベガスで開催された世界最大級のHRイベントのレポートをお届けします。働き方改革や新卒通年採用等、大きなターニングポイントにある日本の人財マネジメントを考える一助として、米国の社会環境と関連づけながらトレンドの先端に迫りたいと思います。
イベント概要(HR Technology Conference & Expo2019)
場所:ラスベガス、アメリカ合衆国
期間:2019年10月1日―4日(2020年は10月13日―16日の予定)
参加者数:10,000人以上
出展社数:450社以上
セミナー数:100以上
URL:https://www.hrtechnologyconference.com
HR Technology Conference & Expoは20年以上の歴史があるイベントになり、世界各国から人事領域に携わる人々が、専門家によるセミナー及びHR TECHベンダーによる展示ブースに立ち寄り熱心に話を聞いていました。弊社からも2名のコンサルタントが参加しましたが、我々の他にも日本から多くの参加者が見られ、最新のHRテクノロジーに対する関心の高さが伺えました。
今回、我々は4日間に渡り数多くのセミナーの聴講、展示ブースの訪問を行う中で、人財の流動性が高い米国において、いかに優秀な社員を囲い込むかが至上命題となっており、人事領域のトレンドを理解するキーワードとして”Un-Biased” “CRM” “Employee Experience”の3つが特に印象に残りました。また、出展社の分布においても、これらのキーワードに直結する「従業員エンゲージメント強化」・「採用の強化と効率化」を売りにした製品・サービスを提供する出展社が目立ちました。
【トレンド キーワード】
・Un-Biased
・CRM(Candidate Relationship Management)
・Employee Experience
# | カテゴリー | 出展社数 |
1 | 採用 (採用管理・候補者追跡システム・面接システム等) |
210 |
2 | リソースマネージメント (タレマネ・リソースマネジメントシステム等) |
163 |
3 | 従業員エンゲージメント強化 (エンゲージメント・オンボーディング・サーベイ等) |
137 |
4 | 福利厚生 | 102 |
5 | AI | 83 |
6 | その他 | 59 |
7 | 支払 | 50 |
8 | キャリアマネジメント | 44 |
9 | 評価 | 28 |
10 | 研修 | 27 |
※HR Technology Conference & Expo 2019 公式パンフレットを元に弊社作成
さて、ここからは上述したキーワードがなぜ米国ではよく聞かれるのかについて、弊社なりの見解を述べたいと思います。まず一つ目のキーワードである”Un-Biased”ですが、日本語に訳すと「偏見のない」・「公平な」というという意味になります。AIを活用した人財マッチングや採用選考を手助けする製品を提供するベンダーと話をする中で度々耳にしました。多様な人種・文化的背景・思想を持った人々の構成である米国社会において、先入観に左右されず、いかに優秀な人財を見落とさずに自社に招き入れるかという視点からこうしたキーワードが重視されているのだと思います。
次に”CRM(Candidate Relationship Management)“というキーワードをご紹介します。CRMというとCustomer Relationship Management、いわゆる顧客関係管理という言葉を思い浮かべますが、この顧客(Customer)の部分を採用候補者(Candidate)に置き換えた概念としてCandidate Relationship Managementという考え方があります。企業への就職を希望する採用候補者(潜在的候補者をも含む)を採用プール(データベース)の中に管理し、その中からその時々の採用条件に適した優秀な採用候補者を探し出すことを思想としています。Job Description(職務記述書)に基づいて中途・新卒を問わず即戦力としての人財の採用を行う企業が多く、かつ流動性の高い労働市場を持つ米国だからこそこのような採用候補者をプールして管理するという考え方が生まれたのでしょう。
最後に、先ほど米国の特徴として労働市場の流動性が高いことを述べさせていただきました。事実、米国労働省の調査によると在職期間の中央値は4.2年となっており、(中央値と平均値の概念が異なるため一概に比較できないが)日本の平均在職期間は12.1年と大きな差があります。仮に20歳から60歳まで仕事に従事するとした場合、単純計算で米国では10回程転職を行うことになります。おそらくこうした転職の多さから米国企業の多くはいかに優秀な人財の流出を防ぐかという点に課題を感じており、これを解決するために”Employee Experience”という、いかに会社生活を通じて従業員に満足できる経験を与えることができるかという点を企業は模索しているものと考えられます。日本でもエンゲージメントという言葉がもてはやされていることにも通じるものがあります。
さて、ここまでの話を総括すると、多様な人種や文化バックグラウンドを持つ人財で構成され、比較的人財流動が激しい労働市場を持つ米国において、いかに優秀な人財を採用するとともに、こうした人財が満足度の高い会社生活を送り離職しないようにするかという観点から、”Un-Biased”、“CRM”、”Employee Experience”の3つのキーワードが度々強調されているのだと我々は考えています。
今回、米国の社会や労働市場の特性から簡単ではありますが、米国におけるトレンドをご紹介しました。振り返って日本を見てみますと、労働生産人口が減少する中、外国人人財の登用のニーズが叫ばれたり、経団連の新卒ルール見直しがあったりと、日本の人事領域も少しずつ変化が出てきています。そういった意味で環境の異なる他国のトレンドを理解することは、今後の日本を考えていく上でヒントとなることでしょう。
次回は、引き続き米国の人事領域の課題を解決するために、具体的にどのようなシステムが米国では販売されているのか、システムの思想や構成についてお伝えしたいと思います。それでは、またお会いしましょう。
◆監修企業
アンカービジネスコンサルティング株式会社
◆記事監修者
アンカービジネスコンサルティング株式会社
人財イノベーション コンサルティングチーム
エグゼクティブ カタリスト 伊藤進一
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