Columnコラム

人財マネジメント変革(志経営・OKR)
2019.12.16

HRテック レポート【後編】 HR Technology Conference & Expo 2019 ラスベガス

HRテック レポート【後編】 HR Technology Conference & Expo 2019 ラスベガス

今回のコラムは前回に続き、10月にラスベガスで開催された世界最大級のHRイベントのレポートをお届けします。今回はその中身として、米国の人事領域の課題を解決するために、どのようなシステムやサービスが米国で利用されているのかについて考察をお届けします。

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<再掲> イベント概要(HR Technology Conference & Expo2019)
場所:ラスベガス、アメリカ合衆国
期間:2019年10月1日―4日(2020年は10月13日―16日の予定)
参加者数:10,000人以上
出展社数:450社以上
セミナー数:100以上
URL:https://www.hrtechnologyconference.com

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HR Techの市場

まず初めにHR Tech市場の動向についてお伝えしたいと思います。日本におけるHR Tech市場は2017年度の179.5億円から年率約40%のスピードで成長しており2019年度には355億円規模にまで急成長している市場です*1。一方、世界に目を向けてみると、140億ドル規模(約15,000億円)まで市場は大きくなっており、その約6割を米国が占めており、米国におけるHR Tech領域における投資意欲の強さが伺えます*2
*1出展:ミック経済研究所 *2出展:CB Insights

米国で見たHR Techのトレンド

こうした米国におけるHR Tech市場が拡大する中、当社はHR Technology Conference & Expo2019にて出展企業の展示ブースを訪問し、直接製品のデモや製品についての質疑応答を通じて、先進HR Tech製品の特徴として以下の3点に着目しました。

①. 採用から退職までのEmployee Lifecycle(従業員ライフサイクル)の全体をカバーしようとしている点
前回投稿において、米国の人財流動性の高さを背景に、米国企業は、”Employee Experience”(いかに会社生活を通じて従業員に満足できる経験を与えることができるかということ)を模索しているのではないかと考察しました。こうした米国企業の課題感に応えるべく、「採用、オンボーディング、登用・昇格、育成、評価、退職等」、従業員ライフサイクルをEnd-to-endでカバーすべく幅広い機能を持ち合わせている製品が数多くみられました。一方、自社の強みを特定領域に限定している製品においてもAPI連携機能を持ち、他のシステムと組み合わせやすいようにする工夫しています。

<従業員ライフサイクルにおけるHR Tech機能例>

◇採用:進捗管理、候補者プールの作成、WEB面接の実施、面接時の評価(得点化)、選考ステージ別の候補者数と評価結果の一覧化

育成:職歴・学歴管理、トレーニング履歴管理、トレーニング受講、推奨トレーニングの発信

評価:目標設定、360°評価、OKR、評価結果分析レポート

配置:異動履歴管理、タレントマネージメント、候補者リコメンデーション

退職:離職率予想、社員満足度調査(アンケート)

②. データ分析基盤の搭載
社員のプロフィール(職務履歴や保有スキル)、人事評価結果、研修履歴、異動履歴等のデータをBIツールで分析できる機能を備えている製品が目立ち、多次元分析、ドリルダウン分析、グラフ作成等、次のアクションを考えるためのデータを可視化する機能が国内のHR Tech製品に比べ充実している印象を受けました。多様な従業員を最適かつ “Un-Biased”(偏見のない)に登用・評価するため、データを活用することを志向しているのではないかと考えます。こうした客観的なデータに基づく意思決定を行う考え方はPeople Analytics(ピープルアナリティクス)と呼ばれ、近年人事領域におけるキーワードとして注目度が高まっています。

③. AIの活用
国内においても採用領域において、エントリーシート選考にAIを活用する企業が出てくるなど、人事領域におけるAIの活用が着目され始めましたが、米国に目を向けても同様にAIによるスクリーニング(選考)を行うためのツールを提供している会社が見られました。例えば、ビデオ面接での候補者の発言を音声認識技術で文字化し、AIによるテキストマイニングで発言内容を採点する仕組みを提供するツールや多数の採用候補者の中から自社にマッチした人財をAIが探す仕組みを組み込んだツールがありました。
また、採用領域以外でもAIを活用して適切な研修プログラミングを提案する製品等、AIを活用して効率的な人事業務をサポートする製品が多くみられました。

今なぜ日本でHR Tech活用が叫ばれるのか

冒頭で述べたとおり、近年、日本においてもHR Tech活用の動きは活発化しています。こうした背景には、従来日本企業の特徴であった「終身雇用」・「年功序列」・「新卒一括採用」等の考え方が崩壊に近づいてきており、従業員を入社年次や職位で画一的に管理することが難しくなっていることが大きく影響していると考えます。そのため、データを利用しながら各従業員に目を向けたマネージメントを行う必要性が増えてきたことがHR Techの利用が増えてきている要因だと考察します。

今回はIT中心の話をお届けしましたが、ITは道具にすぎず、どのように人財をマネージメントするかが最も重要となります。次回は、人財マネージメントについて複数回にわたってお届けしたいと思います。

それではまたお会いしましょう。

 


監修企業

 アンカービジネスコンサルティング株式会社

 

記事監修者

アンカービジネスコンサルティング株式会社

人財イノベーション コンサルティングチーム
エグゼクティブ カタリスト 伊藤進一


 

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