Columnコラム

OKR・人財イノベーションコラム
2020.04.10

OKRの活用 企業戦略の実現に一丸となる組織への変革

OKRの活用 企業戦略の実現に一丸となる組織への変革

内閣府が発表した2019年10~12月期の実質GDPは1.8%減(年率換算で7.1%減)となり、設備投資などが下方修正され、一次速報から0.2ポイント下方修正されました。そして新型コロナウイルス問題が、個人生活にも大きな影響を及ぼす中、2020年1~3月期の実質GDPは2四半期連続で前期比マイナスが見込まれるなど、経済面においても大きく影を落としています。このような状況下だからこそ、組織づくりの原理原則に立ち戻り、環境変化に対して強い組織をつくることが重要です。

産業界の歴史を紐解くと、松下電器産業(現パナソニック)やインテルなど、苦境を乗り越えた企業の例からは、環境変化に強い組織づくりを行う上では、企業戦略に向かって全社一丸となり、スピード感を持って実行する、社員の意識づくりが重要です。そこで今回は、インテルが用いたOKRというマネジメント手法を活用した意識改革の方法やポイントについてご紹介します。いまこそ、事業推進者の獅子奮迅の活躍だけに頼るのではなく、組織のキーパーソンや若手層も含めて社員一人一人が主体性を持って環境変化に立ち向かう組織へと作り替える時です。

本コラムのポイント

環境変化に対応できる組織づくりのために大切なこと
松下電器産業(現パナソニック)やインテルなど、困難を乗り越えた企業の例をみると、環境変化に対して強い組織づくりを行う上では、「全社一丸となって、機動力を持ち、戦略を実行できる社員の意識づくり」が重要です。

社員の意識改革をもたらしたマネジメント手法
インテルはOKRというマネジメント手法を用いて、社運をかけた「クラッシュ作戦」を実行。1000人の社員の意思統一と、一人一人の社員の主体性を持った実行を成し遂げ、市場を取り戻しました。そのOKRはグーグルでも用いられ、成長のカギとして、現在のトレンドワードの一つとなっています。

OKRの特徴・浸透のポイント
全社戦略を実現するために、社員一人一人が何をなすべきかを自ら考えることを通じて、主体性を生み出すことにOKRの大きな特徴があります。その浸透のためには「OKRを使ってみること」そして「柔軟に作り替えていくこと」が重要です。

 

企業戦略に一丸となり、スピード感を持ち実行する組織への変革



松下電器産業、インテルに共通する2つの要素

 

2つの要素

「不況克服の心得十カ条」 を まとめ、「松下電器は不況のたびに伸びてきた」と社員に語ってきた松下幸之助氏は2度の大きな不況を乗り越えました。
一度目は1929年のウォール街大暴落、いわゆるブラックサーズデイに端を発した世界恐慌です。販売不振で在庫が積み上がる中、幹部からの社員数半減の提言に対して、“従業員を一人も解雇せず、生産は半減し逆に販売に注力する”方針を打ち出し、「さすがはおやじさんだ。みんなで力を合わせてがんばろう」と社員が奮い立ち、危機を乗り越えました。
二度目は1964年から1965年の東京オリンピック後の不況時です。松下電器の役員と事業部長、営業所長が全員出席し、さらに販売会社・代理店の社長や会長といった責任者にも全員参加を呼びかけた “熱海会談”を開き、「一地域一販社制」「事業部、販社間の直取引」「新月販制度」 の3方針を立て、社員・パートナー企業が一丸となり戦略を実行することで乗り越えました。

また、アメリカの半導体メーカーのインテルに目を向けると、日本企業等の攻勢を受け1979年には挽回不可能と思われる状況にありました。そこで当時の社運をかけて実施したのが「クラッシュ作戦」です。全社員の半分に当たる1000人を一つの事業戦略実現のために動かし、数年後には市場を取り戻すことに成功をしました。

時代、状況や国は異なるものの、松下電器産業・インテルの両社に共通することは、「企業戦略の社員への深い浸透」「戦略の実現に向け社員が主体的かつ迅速に行動」の2つの要素です。

 

OKRを活用した組織変革


 

インテル「クラッシュ作戦」成功のカギに「OKR」あり

前述した2つの要素、すなわち「企業戦略の社員への深い浸透」「戦略の実現に向け社員が主体的かつ迅速に行動」を実現するために、当時インテルCEOであったアンディ・グローブ氏がMBOを基に考案したマネジメント手法が「OKR」です。

当時、インテルに在籍し、その後OKRをグーグルにも広めたジョン・ドーア氏が「クラッシュ作戦」を振り返って「1000人もの従業員を動かすための驚異的な情報伝達は、OKRシステムがなければ実現しえなかった」と語るように、OKRが重要なカギであったのです。


OKRとは何か

OKRはObjective & Key Resultsの頭文字を取って名付けられており、「Objective(目指す目標)」と「Key Result(目標達成の基準)」を明確にし、OKRを共通言語として事業を推進するマネジメント手法です。

下図のように、全社、組織・チーム、個人の各層の間で相互に関連付けてObjectiveとKey Resultを定めることによって、全社OKRを達成するために各組織や個人に求められることを明確にし、組織のメンバーが持つ力を会社の目指す方向に集中させ、事業成長を実現します。

OKRをグーグルに広めたジョン・ドーア氏の言葉を借りるならば、メンバーの「野心と創造力を最大限に解き放つ」「やるべきときに、やるべきことに集中する」「見当違いな仕事を洗い出す」(※1)ことにより、事業成長を実現するマネジメント手法がOKRです。

(※1)著書「Measure What Matters」より

OKRの例

OKRの成り立ち

ピーター・ドラッカー氏が提唱したMBO(目標管理)をもとに、ビジネス環境のスピードアップに対応するため、よりシンプルかつ短いサイクルに、そして社員の自発性を引き出すために進化したものがOKRです。

OKRの成り立ち

 

ドラッカー氏のMBO
ドラッカー氏が提唱したMBO(Management By Objectives and Self-Control)は、日本では「目標管理」と呼ばれますが、直訳すると「目標と自己統制によるマネジメント」であり、ドラッカー氏は「命令や強制を伴うものではなく、自主性や自己統制に基づき目標を達成するという仕組み」 (※2)と述べています。
日本におけるMBO(目標管理制度)は1990年代後半に成果主義人事と合わせて普及した経緯があり、人事評価に軸足が置かれた制度となっています。

MBOからOKRへ
ドラッカー氏のMBOをもとに、アンディ・グローブ氏がインテルのCEO時代に、インテル版MBOとして考案したマネジメントシステムがOKRの始まりです。
OKRが成果を挙げた代表的な例として有名なのが、1979年の「クラッシュ作戦」です。当時、日本市場や新興企業の台頭に苦戦していたインテルは存亡の危機にあり、それを挽回するため約2000人の従業員のうち半数を動員させ、見事に競合に打ち勝ち市場を制しました。
インテルに在席していたジョン・ドーア氏が、「1000人もの従業員を動かすための驚異的な情報伝達は、OKRシステムがなければ実現しえなかった」 (※3)と当時を振り返って語るように、OKRが重要な成功のカギとなっていたのです。

OKRの普及拡大
その後、ジョン・ドーア氏はベンチャーキャピタリストになり、シリコンバレーを中心とした数々の出資先企業にOKRを紹介しました。その代表例がグーグルであり、現在のグーグルの驚異的な成長をOKRが支えています。
グーグルの組織運営の基礎になったOKRは、ジョン・ドーア氏や他の企業に移ったグーグルの卒業生達が伝道師となって広まっていき、近年日本でも活用する企業が増えています。

(※2)著書「マネジメント」より
(※3)著書「Measure What Matters」より
(※4)TED Talk「ジョン・ドーア: 適切な目標が成功の秘訣である理由」より

 

OKRの特徴 戦略を実現目標に具体化

全社OKRを実現するために、自チームが果たすべきObjectiveやKRは何か 、チームOKRを実現するために、自身が果たすべきObjectiveやKRは何かを、一人一人が自ら考えることがOKRの特徴的な点です。

チーム長やメンバーは目の前の仕事や従来通りの仕事をただ行うのではなく、全社やチーム戦略に基づいて何をすべきかを自ら考えることが不可欠となり、視座を一段・二段と高めた考えを問われ、日常の仕事に反映することとなります。そして全社戦略の実現に必要な目標を、社員が自ら考え・見出し・実行するプロセスを繰り返す中で、自然と当事者意識が生まれてくるのです。

それが、企業戦略に一丸となり、スピード感を持ち実行する組織に必要な要素である「企業戦略の社員への深い浸透」や「戦略の実現に向け社員が主体的にかつ迅速に行動」することに繋がります。

松下電器産業・インテルでは、社員が会社の危機に対して、我がごととして向き合い、敢然と立ち向かい困難を打開しました。OKRは、その成功体験を仕組み化し、再現性をもたらすマネジメント手法なのです。

OKRの特徴

 

OKRを用いて「企業戦略の社員への深い浸透」や「戦略の実現に向け社員の主体的かつ迅速な行動」を実現する

ここまでOKRの有用性をご紹介してきましたが、「企業戦略の社員への深い浸透」と「戦略の実現に向け社員が主体的にかつ迅速に行動」を実現するために、最後に「OKR活用の成功要因」を2つお伝えします。

1. OKRを使ってみること
2. OKRを自社に合う形に作り替えていくこと

OKRは非常にシンプルな手法、考え方であり、始めようと思えば、今すぐに始めることができます。一つのチームから始める、経営陣から始めるなど、まずOKRを使ってみることによって、有用性を実感してください。そして、シンプルな手法であるからこそ、企業ごとにOKRの最適な活用法は異なります。企業文化や社員の意識の成長ステージに合わせて、各社独自のOKR活用法として自社に合う形に作り替えていくことが重要です。

環境の変化が過ぎるのを待つのではなく、激変する環境に対して、今こそOKRの活用を通じて、企業戦略の実現に一丸となる組織への変革を進めていくべきときです。

 


監修企業

 アンカービジネスコンサルティング株式会社

 

記事監修者

アンカービジネスコンサルティング株式会社

人財イノベーション コンサルティングチーム
エグゼクティブ カタリスト 伊藤進一


 

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